私はもともとストリートダンスのインストラクターとして2年間活動し、その後は趣味としてもダンスは続けており、私の生活の中で欠かせない存在でした。
ある日、ダンス仲間を通じて「放課後等デイサービスで子どもたちにダンスを教えてほしい」という話をいただきました。最初は「福祉の現場?自分にできるのかな…」と不安もありましたが、「ダンスを通して子どもたちと関われる」という提案に心が動き、思い切って挑戦することにしました。
発達障害についての知識はまったくの初心者でしたが、現場で子どもたちと関わる中で、少しずつ学び、支援のやりがいを感じるようになりました。インストラクター業は年齢とともに身体的な負担が大きくなり(特に私は膝のケガを抱えていました)、その点でも支援の現場は自分にとって長く関われる道だと感じました。
ダンス療育の現実|ダンススクールとの違いに戸惑う
支援現場で実際にダンスを取り入れてみると、ダンススクールでの指導とはまったく違う課題が見えてきました。

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体をうまく動かせない子が多い
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活動中に集中が途切れやすい
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言葉での説明が伝わりにくく、全体指示が通らない
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鏡がなく、動きの確認ができない
特に難しかったのは「振り落とし」形式(インストラクターが見本を見せて、それを真似して踊る形式)。ASD・ADHD・知的障害などのある子どもたちには、視覚的な手本だけでは理解が難しいことも多く、従来の方法ではなかなかうまくいきませんでした。
試行錯誤の末に見えた「成功するダンス療育」の鍵
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TikTokなどで流行中の曲を使う → テンションが上がりすぎて活動にならない
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3歳児向けくらいの簡単な振り付けにする → できる子には物足りない
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同じ振り付けを繰り返し練習する → 通所頻度がバラバラで習熟度に差が出る
このような経験から、支援現場では「全員で同じ振り付けを覚えて踊る」こと自体がハードルになると痛感しました。
そこで重視するようになったのが、以下の4点です。

これらを踏まえて、子どもたちが無理なく参加できるダンス療育プログラムを組み立てました。
実践!子どもが夢中になる3つのダンス活動
ここでは、実際に現場で効果を感じた3つの活動をご紹介します。すべて、前述の4つのポイントを意識して構成しています。
① アイソレーション(約5分)
アイソレーションとは、「体の一部だけを動かすトレーニング」です。
例:首だけを前後に動かす/肩を上下に動かす
一見地味に見えますが、協調運動が苦手な子でも取り組みやすく、普段使わない動きを楽しんでくれることが多いです。カウントに合わせて「前・後・前・後…」と首を動かすだけでも、「できた!」という感覚が得られ、支援者としても褒めるポイントがたくさん見つかります。
支援の導入としても最適で、活動の入り口として「今日はどんなことするんだろう?」というワクワク感を引き出すのにも効果的です。
参考になる動画:
② リズムトレーニング(約5分)
次は体全体を使ってリズムに乗る活動です。
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その場で足踏み
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左右に体を揺らす
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両足を開いたり閉じたりするステップ
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カウントに合わせた軽いジャンプ
音楽に合わせてリズムをとるこの活動では、動きの正確さより「楽しさ」と「流れに乗る感覚」が大事です。
苦手な子には支援者が正面に立ち、鏡合わせのようにゆっくり動きを見せると、理解がしやすくなります。声かけも「できなくてもOK!」という雰囲気を大切に。「頑張っていること」をしっかり評価してあげましょう。
参考になる動画:
③ リズムジャンプ(約20分)
メインの活動がこちら。これまでの2つと違い、1〜2人ずつ個別で行う形式です。
活動の流れ:
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床に縄跳びやゴム紐などのロープを一直線に貼ります。
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曲に合わせて、ロープをまたぐようにジャンプして進んでいきます。
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端まで行ったら折り返して同じように戻ります。
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戻ったら次の子に交代します。
バリエーション例:
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両足ジャンプ → 左右交互にジャンプ
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クロスステップで進む
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手を加えたポーズ(例:ハートマーク、ピースサイン)
子どものレベルに応じて自由に調整可能です。なかには、アイドルのようなポーズをしながらジャンプする女の子たちもいて、笑顔あふれる時間になります。
この活動では、テンションが上がるような曲の使用もOK。というのも、1〜2人ずつ順番に行う形式のため、興奮による全体の崩れが起きにくいのです。
「完璧にできる」ことを目指すのではなく、「楽しく体を動かすこと」そのものが目的。自由度が高いからこそ、子どもたち一人ひとりの個性も輝きます。
参考になるyoutube動画:
おわりに|「ダンスは楽しい」からはじまる支援
今回ご紹介した3つの活動は、ダンスが得意な子にも苦手な子にも「楽しい!」と感じてもらえる工夫を凝らしています。
私はダンスを通して、子どもたちに成功体験や自己表現の機会を届けたいと考えています。そしてなによりも、「やってみたい」「もう一回やりたい」と思えることが、次への一歩につながると信じています。
支援とは、無理やりやらせることではなく、「やってみよう」と思える仕掛けを用意すること。
その一つとして、ダンスはとても大きな可能性を秘めています。